IB Extended Essay(EE)テーマ選定と執筆の体験談:困難を乗り越えるヒント
Extended Essay(EE)とは:IB DPの大きな山場
IBディプロマプログラム(DP)に取り組む中で、特に多くの生徒が大きな壁と感じるのが、Extended Essay(EE)ではないでしょうか。EEは、特定のテーマについて自ら問いを立て、深く探求し、最大4,000語の論文としてまとめる独立研究課題です。私自身も、このEEには大変な時間と労力を費やしました。しかし、この経験を通じて得られた学びは、その後の学業、そして思考力や問題解決能力の向上に大きく寄与したと実感しております。
ここでは、EEのテーマ選定から執筆、そして最終提出に至るまでの私の実体験を振り返り、当時私が直面した困難と、それをどのように乗り越えたのか、具体的なヒントを交えながらお伝えしたいと思います。
テーマ選定の苦悩と突破口
EEの最初の、そして最も重要なステップはテーマ選定です。IBのどの科目とも関連させることができ、自分の興味を深く掘り下げられるテーマを見つけることは、想像以上に難しいものでした。
私の体験談:興味とリサーチのバランス
当初、私は漠然と「環境問題」に興味があり、その中でも「プラスチック汚染」について研究したいと考えていました。しかし、具体的な問いに落とし込む段階で、「どのような側面からアプローチすべきか」「データは入手可能か」「4,000語の論文としてまとめられるだけの深さがあるか」といった壁にぶつかりました。先生との最初のミーティングでは、「テーマは広すぎる」「先行研究が多すぎてオリジナリティを出すのが難しいかもしれない」というフィードバックを受けました。
この時、私は焦りと同時に「自分は本当にこのテーマを深く知りたいのか」と自問自答しました。結果として、より限定的で、かつ身近な社会問題に焦点を当てることにしました。具体的には、「〇〇国における若年層の政治的無関心とSNS利用の関係性」というテーマへと大きく転換したのです。これは、私が日頃からSNSに触れており、社会に対する若者の意識に関心があったためです。
テーマ選定のヒント
- 心から興味のある分野を見つける: 研究は長期間にわたり、困難な状況に直面することもあります。その時に粘り強く取り組むためには、テーマに対する強い好奇心と探求心が不可欠です。
- 指導教員(Supervisor)と密に相談する: 早い段階から先生とコミュニケーションを取り、テーマの方向性、実現可能性、リサーチの進め方についてアドバイスを求めましょう。先生は多くの生徒のEEを見てきており、貴重な知見を提供してくださいます。
- 狭く深く、具体的に: 広すぎるテーマは、焦点を絞るのが難しく、最終的に表面的な考察に終わる可能性があります。具体的な疑問を立て、範囲を限定することで、深い考察が可能になります。例えば、「なぜ〇〇なのか?」という形で、問いを立てることを意識しました。
- リソースの入手可能性を考慮する: 選んだテーマについて、十分な先行研究やデータが存在するか事前に確認しましょう。一次資料へのアクセスや、言語的な制約も考慮に入れる必要があります。
リサーチと執筆プロセスの挑戦
テーマが固まった後も、EEの道のりは険しいものでした。特に、膨大な情報の中から必要なものを取捨選択し、論理的な構成を構築する作業には苦労しました。
私の体験談:アウトラインとフィードバックの活用
私の場合は、まずリサーチ計画を立て、関連する学術論文や書籍を読み漁ることから始めました。情報収集の段階で心がけたのは、「これ、EEのどこで使えるだろうか?」という視点を持つことです。ただ読むだけでなく、重要な引用や自分のコメントを記録するアノテーション付き参考文献リストの作成は、後々の執筆段階で非常に役立ちました。
執筆段階では、まず詳細なアウトライン(目次)を作成しました。序論、各章の主張、結論の骨子を明確にすることで、論旨の一貫性を保つことができました。そして、各章を書き進めるごとに、先生にその都度フィードバックを求めました。特に「論理の飛躍はないか」「主張を裏付ける根拠は十分か」といった点で厳しく見ていただきました。
一度、序論と第一章を書き上げた段階で、自分の主張が先行研究とあまりにも似通ってしまっていることに気づき、大きな落胆を覚えました。しかし、先生との議論の中で「先行研究を踏まえつつ、自分なりの分析を加える」という方向性が見え、結論部分で独自の考察を深めることでオリジナリティを確保できるというアドバイスを得て、再びモチベーションを取り戻すことができました。
リサーチと執筆のヒント
- 計画的なリサーチ: いきなり書き始めるのではなく、まずはリサーチ計画を立てましょう。どのような情報が必要で、どこから入手するかを明確にすることで効率的に進められます。
- アウトラインの重要性: 論文全体の骨格となるアウトラインを丁寧に作成することは、論理的な構成を保ち、書き手自身の思考を整理するために不可欠です。先生にも確認してもらいましょう。
- 情報源の吟味と整理: 信頼できる学術論文、書籍、公式データなどを優先的に利用し、情報源は正確に記録してください。引用と参考文献リストの作成規則(MLA, APAなど)に則って、一貫性を持たせることを心がけましょう。
- 定期的な進捗報告とフィードバック: 指導教員とのミーティングは非常に貴重な機会です。疑問点や不安な点を積極的に相談し、建設的なフィードバックを早期に得て、次のステップに活かしてください。早期に修正することで、最終段階での大きな手戻りを避けることができます。
- 早めの着手: EEは長期的なプロジェクトです。余裕を持ったスケジュールで早めに着手し、複数の段階に分けて進めることで、焦りやプレッシャーを軽減できます。
EEを終えて得られたこと
EEは本当に大変な道のりでしたが、この経験を通して、私は学術的なリサーチ能力、批判的思考力、そして論理的な文章構成能力を大きく向上させることができました。また、一つの課題に粘り強く取り組み、困難を乗り越える経験は、自信にもつながりました。
IB DPの生徒であれば、誰もがEEの壁に直面するでしょう。しかし、それはあなた一人だけではありません。周りの友人や先生を頼り、計画的に、そして諦めずに取り組めば、必ず素晴らしい成果へと結びつくと信じております。この体験談が、現在EEに取り組んでいる皆さんの少しでもお役に立てれば幸いです。